これからのビザカード

コンサル先進国のアメリカでは、コンサルティング会社の代名詞とでも言、つべき「マッキンゼー」出身者が、次々と有名企業の社長や幹部に就任し、しかも実績を上げているのです。
コンサルティング経験を実務に活かしたいと思う「マッキンゼー」OBやOGが、実業の世界に転進し成功しているということは、「選手の経験を生かしてコーチ・監督になる」のとは逆に、「コーチを経てから、選手になり、大活躍している」という図式になります。 彼らは、その成果から産業界で隠然とした勢力を持つまでになっています。
その強烈なパワ-と人的ネットワークの強固さを評して、アメリカの某マスコミが「マッキンゼ・マフィア」と命名したのです。 「マッキンゼー・マフィア」の代表選手を何名か挙げてみましょう。
有名なところでは、瀕死の危機にあったIをわずか数年で再生させたルイス・ガースナー氏の名前が、まず思い浮かびます。 同氏は、「マッキンゼー」のコンサルタントを務めた後、A、RJRナピスコというアメリカを代表する企業のCEO(最高経営責任者)を歴任しました。
「カード会社」「お菓子の会社」という異業種を渡り歩く中で、「プロの経営者」としての評価を高めていきました。 そして、その経歴を買われて、当時瀕死の状態にあった巨大コンピュータ企業、IのCEOに招かれたのです。
同氏が主導したI再建の物語は、『巨象も踊る』という本に詳しく描かれていますが、メインフレーム中心からダウンサイジングするコンピュータ業界の中で、巨大化した組織を建て直すことは並大抵の苦労ではなかったのです。 また、AのH氏や、R社を大成長させたJ氏なども、「マッキンゼー」です。
また、シアーズ、ウエスティングハウスなどの役員にも、「M、P」出身者がいます。 また、大企業・有名企業の経営トップに招かれる例だけでなく、「外資系コンサルティング会社」のOB・OGがみずからベンチャー・ビジネスを起業し、その経営者となる例も多く見られます。

たとえば、「マッキンゼー」からは、リサイクルワンを設立した木南陽介氏、ネットオークションサイト「B」で有名な東証マザーズ上場企業DのN社長など多くの起業家が巣立っています。 こうした動きは、「マッキンゼー」や「ボストン・コンサルティング」に限ったものではありません。
これら2社以外の「コンサルティング会社」からも社長が多数生まれています。 たとえば、「会計系コンサル会社」である「A」出身の西尾直紀氏はM杜を創業し、会社設立後わずか9カ月という猛スピードで東証マザーズに株式を上場しました。
また、同じく「A」OBのK氏やT氏もS社を設立し、同社は20O5年に東証一部に上場企業となっています。 「マッキンゼー」や「ボストン・コンサルティング」では、自社を退職した人のことを、「アルマナイ(卒業生)」と呼びますが、おわかりのとおり、これら外資系コンサルティング会社の「卒業生」が日本の経済のかなりの部分を動かしているのです。
また、「外資系コンサルティング会社」のOB・OGが、大手企業の経営企画担当や新規事業担当役員としてヘッド・ハンティングされ、力を振るう例も増えています。 こうした例としては、教育・生活関連企業のベネッセ、日本で幅広く業務を営むGEUのファーストリテイリング、(ゼネラル・エレクトリック)ジャパンなどが挙げられます。
卒業生dが活躍している、こうした動きの中でも、とりわけ「コンサルティング会社」のが、「企業再生」の世界です。 卒業生が社長を務めている大手企業の例として、27ページで取り上げたDやKといった会社は、経営難に陥り、いったんは、官製「企業再生ファンド」とも言える「産業再生機構」に支援を仰いだ企業です。
こうした企業の経営者に「外資系コンサルティング会社」の卒業生Hが経営者として送り込まれているのです。 こうした例は、大企業ばかりではありません。
たとえば、「産業再生機構」では、問機構が20O3年8月に支援を決定した熊本のローカルパス会社である九州産業交通に、マッキンゼーの「卒業生」である秋池玲子さんを派遣しました。 彼女は、30代の若きながら、同社の取締役として経営再建に手腕を発揮しています。
このように、ベンチャー企業の創設者として、また、大企業の新規事業担当役員として、あるいは、再生企業のマネジメントとして企業経営に携わる「外資系コンサルティング会社」のOB・OGには、30代の若手や女性も多く見られます。 一方、日本のこれまでの企業社会においては、30代は中堅社員であり、経営者になるまでに長い時間を要します。

どんなに優秀であり、やる気があっても、会社全体を動かすようなポジションに就けるのは、50代以降というのが、日本の企業社会の常識です。 こうしたことから、「大企業では力を発揮できていない」と感じる30代前後の有能なビジネスパーソンの中には、転職先として「コンサルティング会社」を選ぶ人々が増えてきているのです。
彼ら、彼女らにとっては、「外資系コンサルティング会社」は、社長や経営者となるための「登竜門」あるいは「近道」として捉えられています。 これに呼応するように、コンサルティング会社に就職を希望する大学や大学院の新卒者も増えています。
ここで、日米の学生の就職ランキングを調べると興味深いことがわかります。 最優秀な学生の進路について、日本では、最近まで、①旧大蔵省(財務省)や旧通産省(経済産業省)といった中央官庁の官僚、②メーカーや商社、銀行など大企業のビジネスマンといったあたりが定番でした。
ところが、アメリカでは、一流大学や大学院を最優秀な成績で卒業する学生の中には、どこにも就職しない若者も多いのです。 かといって、彼らは、日本の学生のように、フリーターになったり、モラトリアム留年したりするわけではありません。
みずからの人生を切り拓くべく、起業する道を選ぶのです。 つまり、Bのような若者がアメリカにはたくさんいるわけです。
就職先のランキングも違います。 日本で上位に来る官僚や銀行員という道は、彼らにとってはメジャーな選択肢ではないのです。
彼ら最優秀の学生に人気の職種は、M&Aやコーポレート・ファイナンスを主業とするゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレ!といった投資銀行で働く「インベストメント・パンカー」か、あるいは、投資ファンドやヘッジファンドの運用会社(アセット・マネジメント)で働く「ファンド・マネージャー」です。 前書『投資ファンドとは何か』で描いたファンドやM&Aをはじめとする最先端の金融ビジネスの世界の「徹底した結果主義」、「成果が報酬に直結する仕組み」の魅力が若者を惹きつけているのです。
「投資ファンド」が経済を左右する「ファンド資本主義」となって久しいアメリカ経済を考えれば、こうした学生の選択も当然のことと言えるでしょう。 アメリカの最優秀の学生の間で、これら「インベストメント・パンカー」や「ファンド・マネージャー」と双壁をなす人気職種があるのです。
それが、「コンサルタント」です。

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